2012年10月2日火曜日

軌道秩序と超伝導の共存

東大の中辻准教授のグループにより金属間化合物 PrTi2Al20 において、軌道(四極子)秩序と超伝導が同時に発現することが報告されました。元論文はこちら

PrTi2Al20でのPrは4f状態に電子が2つある4f2状態であり、基底状態は非磁性の二重項Γ3になります。つまり、非磁性でありながら、四極子の自由度を持ちます。実際、同じ電子状態をもつPrPtBiやPrPb3では(反)強的な四極子秩序が観測されています。PrTi2Al20に関しても、2.0 K以下で四極子秩序が観測されています。



今回、PrTi2Al20の0.2 K以下において超伝導が発現することが発見されました。この超伝導は転移温度の磁場依存性から第二種超伝導と考えられ、電子の有効質量比は16となっています。同じ結晶構造を持つPrIr2Zn20でも反強的四極子秩序(0.11 K)と超伝導(0.05 K)が観測されていますが、有効質量比は1程度であり、近藤効果も観測されていません。PrTi2Al20がPrIr2Zn20に比べて高い転移温度を持った起源として、重い電子有効質量であると考えられます。

このように四極子(軌道)秩序を持ちながら重い電子による超伝導を発現する物質が初めて発見されました。PrTi2Al20は非磁性体であることから、軌道の揺らぎがクーパーペアの形成に関与した超伝導である可能性が示唆されています。

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